40歳になって、『人生の経営戦略』を読みました
2026.06.01
会社の公式な見解ではなく、代表の清水が個人として書いた記事です。

40歳になりました。節目に、山口周さんの『人生の経営戦略』を読みました。
経営戦略の考え方を、会社ではなく「自分の人生」に当てはめてみる、という本です。
読んでいて、少し不思議な気持ちになりました。書いてあることが、ここ数年で自分が選んできた働き方と、けっこう近かったからです。狙ってやったわけではありません。あとから「ああ、こういうことだったのか」と気づいた、という感じです。
せっかくなので、本の内容を借りながら、自分の働き方を振り返ってみます。
40代という折り返し
本では、人生を四つの季節にたとえています。春(〜30歳)は試す時期。夏(30〜50歳)は築く時期。秋(50〜70歳)は広げる時期。冬(70歳〜)は与える時期。だいたいそんな分け方です。
40代は、夏と秋の境目あたりにあたります。ユングという心理学者は、これを「人生の正午」と呼んだそうです。
少し前に「30代後半、揺らぐアイデンティティ」という記事を書きました。あのときのもやもやは、たぶんこの境目に立っていたからだと思います。
本には、歳を取ると衰えるだけ、とは書いていません。とっさにアイデアを出す力は若い頃がピークでも、知識を組み合わせて人にわかりやすく伝える力は、むしろ歳とともに伸びるそうです。
今は研修や人材育成の仕事をしています。この話は、自分の実感とよく合いました。
能力より、いる場所を変える
いちばん刺さったのは、立地の話でした。
会社の強さは、持っている力よりも「どこにいるか」で決まることが多い。だから状況を変えたいとき、スキルを増やすだけでなく、いる場所そのものを変える手もある。本にはそう書いてありました。
著者の山口さんも、外資系コンサルのパートナーという肩書きを手放して、海のそばの葉山に引っ越したそうです。これを読んで、思わず笑ってしまいました。レベルは違えど、自分とよく似ていたからです。
20代はいすゞ自動車で働きました。30代は農業ベンチャーとIBMにいました。世間的には悪くないキャリアだったと思います。
でも、家族との時間や、自分が落ち着ける場所を大事にしたくて、IBMを辞めて群馬のみなかみに移りました。もう4年以上になります。今は妻と3人の子ども、大型犬と暮らしています。
本には、お金ばかり追いかけると、力やつながりがすり減って、かえって損をする、と書いてありました。人が最期に後悔するのは「働きすぎた」「友だちを大事にすればよかった」の二つが多い、という話も紹介されていました。
移住は、たぶんその後悔を避けるための選択だったのだと思います。
山の中から、全国の仕事を
「そんな田舎で仕事は大丈夫なのか」と、よく聞かれます。
これも本に答えがありました。リモートワークが広がったことで、仕事は「全国大会」になる、という話です。
昔は、その地域で一番なら食べていけました。でも今は、全国で見て、何か一つの分野で選ばれないと厳しい。本にはそう書いてありました。
今の自分が、まさにそれです。群馬の山の中にいながら、東北から九州まで、全国のお客様と仕事をしています。「群馬のコンサル」ではなく、「AI・DXの分野で選ばれる」ことを目指しています。場所を捨てたというより、場所の意味が変わった、ということだと思います。
いくつかの仕事を組み合わせる
本には「バーベル戦略」という考え方も出てきます。
性質の違う仕事を組み合わせる、という意味です。安定した仕事と、当たれば大きいけれど不安定な仕事。この二つを両方持っておく。特許局で働きながら論文を書いてノーベル賞を取ったアインシュタインが、例に出ていました。
今の自分の仕事も、いくつかの組み合わせでできています。
上場企業や官公庁向けの、DXやAI活用のコンサルティング
自社で作っているSaaS、wax-d と wax-s
JGAP上級指導員としての農業DX
note やこういった発信
山口さんは、コンサル時代にこう気づいたそうです。「自分の時間を切り売りする仕事は、偉くなるほど自由が減る」と。だから、自分以外の何かに働いてもらおうと考えて、毎週ブログを書き続けた。それが5年後、最初の本につながったそうです。
これも、よくわかります。SaaSを作るのも、こうして文章を書くのも、時間を切り売りするだけの働き方から少し抜け出すための、自分なりのやり方かもしれません、そこまで意識していませんでしたが。
AIの時代に大事なのは「問い」
自分の本業はAIの活用支援です。だから、本のAIについての話は、特に身につまされました。
AIは、正解を出す道具です。正解がたくさん、安く手に入る時代になると、「正解を出す力」の価値は下がっていく。では何が大事になるか。本では「問いを立てる力」と「人の気持ちがわかる力」、そして「教養」だと書いていました。
これは、現場で毎日感じていることでした。
経営者の方と話すとき、自分の役目は「AIで正解を出すこと」ではありません。「この会社はAIで何をすればいいのか」「何を準備すればいいのか」を一緒に考えることです。
いつも「習うより慣れろ」と言っています。研修をやって終わりではなく、お客様自身が考えて、自分たちで改善を回せるようになること。それをゴールにしています。
AIに考えることまで任せるのではなく、最後に決めるのは人間でいたい。リスキリングの仕事は、たぶんそこが大事なのだと思います。
(前に「AIを使うのはズルなのか」という記事を書きました。答えはここにあった気がします。道具に使われるか、道具を使って自分の問いを深めるか。その違いだと思います。)/blog/nee7751634a44
知恵を、もっと多くの人に
本の最後に、山口さんは読者を「資本主義社会のハッカー」と呼んでいます。
仕組みを冷笑して降りるのでもなく、ただ要領よく勝つのでもない。仕組みをよく理解した上で、それを使って社会を少しよくしていく人たち、という意味だそうです。一部の人が独り占めしてきた経営の知恵を、もっと多くの人に渡したい、と書いていました。
ここを読んで、自分のやっていることも、少しはこれに近いのかな、と思いました。
仕事の半分は、AIの最先端を追うことです。でももう半分は、「AIなんてまだ全然わからない」という方の、最初の一歩を手伝うことになっています。メーカー、建設、教育、出版、官公庁、それから農業や漁業の現場まで。
一部の人だけが使えるAIを、ふつうに働く人にも使えるようにしていく。リスキリングは、そういう仕事だと思っています。
40代は折り返しだそうです。これまで積んできたものを、プロダクトや言葉や研修というかたちで、これから少しずつ人に渡していけたらと思っています。
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