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ブログ/代表の考えごと

必ず見ておいたほうが良い:SoftBank World 2026 孫正義 特別講演

2026.09.10

会社の公式な見解ではなく、代表の清水が個人として書いた記事です。

2040年の「ASIエコノミー」の話が良かったので、内容をメモしておきます

ソフトバンク、孫さんの講演非常に興味深かったです。
2040年の世界を「数字」で描いていて、AI活用支援を仕事にしている身としては、雑談用のネタというより、普通に事業計画の材料になる話だと感じました。

見たのはこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=dTO-tYqZOZg

一度通しで見たあと、自分で見返すために内容を整理しました。以下はそのメモです。数字はすべて動画内で語られていたもので、私自身が裏取りした値ではありません。そこは分けて読んでいただければと思います。

話の起点:400万年 vs 100年

人類が二足歩行を始めてから400万年。その最後の100年で、それまでの進化を超える「知能の爆発」が起きる、という掴みから入ります。

煽りの枕かと思ったのですが、そのあとがずっと具体的でした。

1. 2040年、世界GDPの20%をAIが生む

・AIが創出するのは世界GDPの約20%、金額にして約7,000兆円
・利益率50%で、年間利益は3,500兆円
・一方、株式時価総額に占める割合は約80%
・残り80%(GDP側)は食事・散歩・家族との時間といった「人間らしい不変の生活」

GDPで20%、時価総額で80%というねじれが面白いところでした。市場は現在の売上規模ではなく、利益率と将来の成長期待を見ます。ですから「経済に占める割合はまだ小さいのに、株価だけ先に全部持っていかれる」という状態になるわけです。今の相場でも既にそうなっている、という話の延長として聞くと納得感があります。

比較対象としてインターネット革命が出てきますが、あれが置き換えたのは広告産業でGDPの1%程度。桁が違う、という主張でした。

インターネット革命 → ASI革命(2040年)

・産業インパクト:広告(GDPの1%)→ 全産業の20%(7,000兆円)
・年間利益:- → 3,500兆円(利益率50%)
・投資規模:数兆円規模 → 年間5兆ドル(約800兆円)
・主役の数:数億のWebサイト → 100兆個のAIエージェント
・通信の本質:人間 vs 人間 → エージェント vs エージェント

最後の行が一番効きます。今のWebは人間が読む前提で設計されていますが、通信の主体がエージェント同士になるのであれば、UIもAPIも認証も前提が変わります。ここは自分の仕事に直結する話なので、別途考えたいと思っています。

2. エージェント中心社会:自己増殖と自己進化

100兆個という数字の中身についての話です。

一般の社員がこなすタスクはせいぜい100種類程度、という比較が出てきます。それに対して100兆個のエージェントが24時間互いに通信し、交渉し、実行する。そうなると人間の意思決定スピードのほうがボトルネックになる、という指摘でした。

エージェントの本質として挙げられていたのが2つです。

・自己増殖:エージェントが、自分のタスクを最適化するために新しいエージェントを生む
・自己進化:膨大な演算能力を使って、人間の介在なしに自ら能力を高める

生命が40億年かけて獲得したアルゴリズムをデジタルで再現する、という言い方をしていました。

実務の感覚としても、エージェントを1個作ると「これを呼ぶ側のエージェント」が欲しくなることは確かにあります。増え方が線形にならないのは実感としてあります。

3. 計算能力の単位が「クエッタ」まで行く

接頭辞の話が出てきます。今の最先端がエクサ(10の18乗)で、そこから4段上がります。

エクサ(10^18)← 現在の最先端
 ↓
ゼッタ(10^21)
 ↓
ヨタ(10^24)
 ↓
ロナ(10^27)
 ↓
クエッタ(10^30)← 2040年の水準

エクサからクエッタで10の12乗倍、つまり1兆倍です。

ここで具体的なハードの話が入るのが良かったところです。現行の最先端であるBlackwell(GB300)が1ユニットで20ペタフロップス。1,000ユニット繋いでようやく20エクサフロップス。ここからクエッタまで12桁ある、という置き方をしていました。

必要な投資は年間5兆ドル(約800兆円)。ただしこれを「巨額」と捉えるのは違う、年間利益3,500兆円から見れば誤差だ、という論法でした。ここはリターン側の数字を信じるかどうかで評価が180度変わる部分です。数字の大小ではなく比率で語っているのは、聞き方として覚えておきたいところでした。

4. エネルギー:3TWと核融合

計算能力の話が必ず電力とセットで出てくるのが良かったです。AIの話は「モデルが賢くなる」で止まりがちですが、実際の制約はだいたい電力とデータセンターの土地にあります。

・必要な電力は3TW(テラワット)、しかも毎年1TWずつ増える
・2040年までのつなぎは天然ガス。安定供給できることが理由
・2040年頃に核融合が実用化し、そこに移行する
・AI自身が核融合の開発を加速させる、という「進化のループ」

「AIが自分の生き残るためのエネルギー源を自分で設計する」という表現をしていました。話としては綺麗すぎる気もしますが、電力がボトルネックである以上、最大の投資インセンティブがそこに向くのは筋が通っていると思います。

5. アトム側:ヒューマノイド10億体

デジタル側の話のあと、物理世界の話に移ります。

・世界に10億体のヒューマノイドが普及
・24時間365日稼働、1体で人間10人分の生産性
・実質100億人相当の労働力

400万年間、労働の主役は常に生物(人間)でした。それが初めて機械に移る、という位置づけで語られていました。「仕事が奪われる」ではなく「労働の主役が移る」という言い方をしています。

10億体という数字の妥当性はさておき、1体あたり人間10人分という前提の置き方は覚えておきたいと思いました。台数だけ見て「まだ少ない」と判断すると読み違えることになります。

6. スーパーヒューマン:AIは初めての「脳の延長」

ここが個人的に一番刺さった部分です。

自動車が足の延長、飛行機が翼の延長だったのに対して、AIは初めての「脳の延長」だという整理でした。自分の経験や思考を学習させたエージェントを分身として持ち、自分が寝ている間もテニスをしている間も、そのエージェントたちが仕事や研究を進めてくれる、という話です。

そのうえで、人間が全力を注ぐべき領域として3つ挙げていました。

・感動:芸術、文化、旅
・興奮:未知の探求、新しい価値の起業
・愛:家族や友人と過ごす、代替不可能な時間

AIを拒絶することは自分の進化を拒むことと同義、という言い方をしていました。強い言い方ではありますが、エージェントを日常的に使っている感覚からすると、そこまで外れてはいないと思います。

7. 医療とセキュリティ

「健康寿命をあと10年延ばせるならいくら払うか」という問いから入ります。ほとんどの人が全財産の半分でも払う、だからここは巨大産業になる、という展開です。

・医師の99%を超える診断精度に既に到達している
・遺伝子に基づく個別化医療、専用治療薬をAIが即座に設計
・新薬開発を従来の200倍に加速

そのうえでリスクの話に入ります。ここが具体的で良かったところです。

・自社システムをAIで自己診断したら10,500件の脆弱性が見つかった
・日本の大企業63社をテストしたところ、一社残らず穴だらけだった

AIを使った攻撃はもう人間の速度では防げないので、防御側もAIで固めるしかない、という結論でした。明るい話の途中でこれを挟んでくるのは誠実だと思います。攻撃側だけがAIを使う状態が一番まずいわけですから。

自分の関わる案件でも、AI活用の話とセキュリティ診断の話は別々に進みがちですが、攻撃側の速度が上がるのであれば同じテーブルに載せるべきだと考えています。

8. 経営の話:ROA(Return on AI)

締めは経営者向けの話になります。

「AIに仕事が奪われる」のではない。「AIを使う企業が、使わない企業から仕事を奪う」

行動指針として3つ挙げられていました。

  1. ROA(Return on AI)を最大化する — 資産利益率(Return on Asset)ではなく、AI投資に対する生産性向上で測る。しかも1年目の結果で判断せず、3年スパンで継続する

  2. リーダーが「AIだ」と言い続ける — 組織のDNAがAIネイティブになるまで、全業務のエージェント化を徹底する

  3. ビジョンを期限と数値で語る — 「AIは重要だ」のような形容詞ではなく、15年後の売上・利益・シェアを数値で描き、そこから逆算する

日本的な「謙虚さ」への批判も、かなり強い調子で入ります。世界一を目指さないリーダーは従業員に対して無責任だ、という趣旨でした。ビジョンなき経営は羅針盤のない航海どころか「船が丘の上に上がってしまう」という比喩が出てきて、これは分かりやすかったです。方向が違うのではなく、そもそも進めなくなる、ということですね。

3番目は、AI活用支援の現場でそのまま使えると思いました。「AI推進」で止まっているプロジェクトは、だいたい目標が形容詞で書かれています。数値と期限が入った瞬間に、やることが自動的に絞られます。

ROAを3年スパンで見る、という点も実務的だと感じました。AI導入の投資対効果を初年度で判定すると、たいてい「思ったより効かない」で終わってしまいます。学習コストと業務の作り替えが先に来るので、当然といえば当然です。

見終わっての所感

未来予測ですので、数字がそのまま当たるとは思っていません。7,000兆円も10億体も、前提が少し動けば結果は大きくブレます。特に「年間利益3,500兆円だから5兆ドルは誤差」という論法は、リターン側を先に信じている構造ですので、そこは割り引いて聞きました。

ただ、この手の話の価値は精度ではなく「解像度」にあると思っています。エクサからクエッタまでの4段、Blackwell 1,000ユニットで20エクサ、1体10人分、GDPの20%と時価総額の80%。こういう具体的な数字を持っておくと、目の前の案件で「どこまでやるか」を決めるときの物差しになります。

特に「通信の主体がエージェント同士になる」という指摘は、今作っているものの設計に直接効いてきます。人間が画面を見る前提で作っているものが、数年後にどう見えるのか。ここはもう少し自分で詰めたいと思っています。

AI関連の仕事をしている方は、一度通しで見ておく価値があると思います。

https://www.youtube.com/watch?v=dTO-tYqZOZg

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