フリーランスになるまでの道のり(全5回連載)第3回:農業スタートアップへの転職──価値観が大きく変わった2年間
2025.05.14
会社の公式な見解ではなく、代表の清水が個人として書いた記事です。

スタートアップへの転職を決めた理由
アメリカ駐在で出会ったフリーランスのコンサルタント。彼の自由な働き方に衝撃を受けた私は、「自分もこんなふうに働いてみたい」という思いを強くしていきます。ただし、そのためには専門性や独自の価値が必要だとも痛感していました。
いきなり独立する勇気はなかった私は、「自分の視野を広げ、できることを増やす環境に身を置こう」と考えました。その結果選んだのが、60人規模の農業系スタートアップへの転職です。
農業スタートアップを選んだ理由は2つ。ひとつは、大きな会社では経験できなかった“全体が見える仕事”ができること。もうひとつは、日本の食と農に可能性を感じていたからです。
アメリカ滞在中、日本食の価値や農産物の魅力を再認識した私は、「農業や食こそが、これからの日本を支える強みになるのでは?」と考えるようになっていました。
その当時、私は現地でカリフォルニア米を食べていました。価格が驚くほど安く、だいたい8kgで1500円程度でした。ただでさえ物価が高いアメリカカリフォルニアのロサンゼルスです。収入や生活費の中に占める農産物、お米の価格はものすごく安かった。なぜ日本は米どころと言われ主食としてお米があるのに、味も大きくは変わらないカリフォルニア米がここまで安く手に入るのか。
日本の農業や食品の流通、その構造的な問題に興味を持つようになるとともに、改めて日本の価値などを再認識するような、そんな視点を得られたのだと思います。
事業企画マネージャーとしての挑戦
転職後は、事業企画マネージャーとして、さまざまな業務に携わりました。
他社との業務提携・交渉
出資計画の立案
新規サービスの企画と実行
広報・PR活動の立ち上げ
経理・請求業務の基礎構築
大企業では部門ごとに分かれていた業務を、スタートアップでは横断的にすべて自分たちで進める必要があります。請求書のやり取りひとつ取っても、「そもそも納品書ってどう流れるんだっけ?」というところから学びました。
これまでエンジニアリングやシステム企画の立案といった領域にいた私にとっては、“現場でお金を稼ぐために仕事を回していく”という商売人としての泥臭い経験が非常に新鮮で、刺激的でした。まさに、「実践でしか学べないこと」を2年間で一気に吸収した実感があります。
※ちなみに、実力が伴うかどうかは別としてビジネスを学ぶための手段として、スタートアップへの転職か、MBA取得を検討していた時期もありました。
農業業界の課題と限界
ただし、理想ばかりを描いていられる環境ではありませんでした。
農業業界には、守られるべき産業としての歴史と制度があります。それゆえ、市場原理だけでは動かない面も多く、自由なビジネス設計やスピーディな意思決定が難しいこともしばしば。
実際に、どれだけ良いプロジェクトでも、現場や制度の壁でなかなか進まないことがありました。変化には非常に時間がかかります。これが農業業界における“構造的な難しさ”でもあると感じました。
同時に、テクノロジーはどんどん進化していきます。クラウドやスマートフォン、ローコードツールなど、業務を加速させる手段は着実に増えていました。私は「これからの時代を生き抜くには、やはりテクノロジーの力を深く理解する必要がある」と実感するようになります。
次のステップへ──テクノロジーと戦略を学び直す
農業という領域に一定の理解が深まった一方で、私は「このままでは時代に取り残される」という危機感を抱き始めていました。
そこで次に目指したのが、“テクノロジーに強いコンサルティングファーム”です。自分の中にあった「農業×デジタル」という軸を持ちつつも、今度はもっと汎用性のあるスキルを身につけたいと考えました。
転職活動の結果、最終的に選んだのはIBMでした。世界有数のテクノロジー企業であり、幅広い業界を相手にDXや戦略支援を行うこの会社でなら、自分に足りなかった視点とスキルを鍛えることができる──そう確信しての決断でした。
次回は、第4回「IBMでの葛藤と、副業から始まる独立の兆し」へと続きます。新たな挑戦の中で、自分の適性や働き方を再定義していく過程を描いていきます。
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